vol.6株式会社K.CENTURY

代表取締役社長 木口 栄三

「とにかくお金が欲しかった。そのためにどれだけ手を抜けばいいのかばかり考えていました」株式会社 K.CENTURY 代表取締役社長 木口 栄三さんは、苦笑いしながら数十年前の過去の自分を振り返る。木口さんの口から語られるこれまでの歴史には、二度価値観が大きく変わった瞬間があった。「金が全て」だった若き日の木口さんの目指すものはいま何を描こうとしているのだろうか。野心溢れた青年のあゆみを辿ることを通じて、先に見据える未来を覗いてみたい。

再び塗装屋へ

17歳の木口さんが塗装屋を始めたのは、中学を卒業して就職をした友人たちが手っ取り早くお金を稼いでいたからだという。「ほんと安易な理由でしかなかったです」それまで、父の紹介でフランス料理屋で働いていた木口さんは、労働環境の過酷さと独立の道への遠さから仕事を辞めた。そうした経緯で、塗装業を選んだ木口さんの夢は「早く独立してお金を得ること」という料理屋時代に実現できなかったことだった。 
夢に向かって昼夜も問わず働き続け、友人と二人で独立を果たした。しかし、夢の独立を語る木口さんの表情はどこか苦々しい。「よくいえばがむしゃら。当時の僕の夢は、誰よりもお金が欲しいということだったんです。当時その夢の実現の方法として僕が考えていたのは、手を抜いて工事をできる限り早く終わらせることだったんです」
そんな日々に終止符を打つ出来事が起こる。あるビルの吹き付け工事で低品質の仕上げをしてしまったことで、クレームが入り再塗装のために大赤字を背負ったのだ。この出来事により友人とも決別し、塗装業を一度辞めてしまったという。数年間ちがう仕事を転々とし、うだつのあがらない日々を送った。そんななかで木口さんが最後に選んだのは、塗装屋へ戻るという選択だった。「やっぱり塗装屋がいいと思って、それまでできなかった足場組みやペンキ塗り、色の調合の全てを教えていただいて、再スタートを切りました」

「お客様が全て」へ

再び塗装屋を始めると事業は軌道にのり、募集を出せば職人は集まり、仕事も増え続けたという。しかしそれは景気に後押しされたにすぎず、本質的な仕事の姿勢は依然変わっていなかったと木口さんは振り返る。「仕事がたくさんあったのも、工事を振り分けている担当者がリベート欲しさに発注してくれていただけでした。僕の考え方が一気に変わったのは、このあとでした」
木口さんの考え方を変えた出来事。それは発注元の担当者が変わり、その後任者からある事実を突きつけられたことから始まる。「あなたの会社は、職人さんたちの態度が悪く、手を抜いた工事ですぐに引き上げると評判が悪い。あなたの昔の同僚の現場を見に行ってみなさい」そう教えられ、元同僚の現場を見たときに、木口さんは大きなショックを受けたという。
「ものすごく丁寧な仕事ぶりでした。うちとこんなにも違うのかと唖然になると同時に、絶対に負けたくないと思いました。品質や対応はもちろん、かかわる人に喜んでもらえる工事をしたいと強く誓いました」

品質でつながる仕事の輪

それから木口さんは、職人さん達と相談しながら改善すべきところを徹底的に直していき、指名してもらえるための努力をしていった。「お金儲けよりも丁寧な仕事で評価していただき、お客様に喜んでもらうことのほうが一番の幸せと変わっていきました」と語る。
しかしその一方で、社内の営業体制は盤石ではなく、営業マンが独断で行動し、時には自社の不利益になる動きを行うこともあったという。そのため木口さんは自らが営業の先鋒にたち、慣れない営業ながらも誠心誠意の気持ちを込めて、対応していった。こうして、受注から工事まで一貫した誠意と熱意で取り組んで行ったことで、お客様から評価いただき、そこから新たな受注に結びつくことが増えて行ったという。「『次も頼むわ』とお客様からいただいた一言で、品質こそがその先に繋がっていくんだ、ということを強く実感しました」

「社員の幸福からお客様の喜びへ、そして新たな仕事へ」

創業当時の利益主義からお客様主義へと価値観が変化した木口さんであったが、現在ではさらに考え方が変わってきたという。「がむしゃらすぎるところは変わらないから、お客様主義も少し行きすぎていたところがあったんです」木口さんの新たな気づきは、社員への接し方にあった。「徹底したお客様主義で、同じようにできない社員に対して思いやりが欠けていたような気がします。お客様を第一に考えろ、それができて当然だろうと。きちんと教えないとそこまでできない人がいることを考えられてなかったんです。本当は、社員を教育して環境を整えて、社内の充実度を高めることから良い工事に繋がっていくことに気づいたんです。ここまで気づけたのはここ数年なんですけどね」木口さんはそう語る。「まずは私自身が何があってもあきらめずみんなと一緒に歩もうという協調性と思いやりをもつことで、働きやすい良い工事ができる会社にしていかなくちゃならないんです」木口さんの実感の伴った気づきは、K.centuryの大きな推進力となって道を切り開いてきた。K.centuryの未来は、社員の幸福からお客様の喜びへ、そして新たな仕事へと循環していく企業を目指して進んで行く。