vol.9神蔵-KAGURA-

代表取締役 忰山舞

埼玉県新座市、田畑が点在する住宅街に突如として出現するクリーム色の巨大なガレージ、そして若草色のビートル。

一見すると、流行りのアンティーク家具屋かと間違うかもしれないこちらが、今回お話を伺った「神蔵-KAGURA-」。

「神蔵-KAGURA-」は、鳶服、作業着、安全帯、安全靴、地下足袋、ヘルメットなど身を守るものはもちろん、ハンマーやスパナ、ソケット、革手袋、ゴム手袋まで業務に必要な物全般を取りそろえている、建設業に携わる者にとっては、ある意味、馴染み深い類の店舗。

「神蔵-KAGURA-」を取り仕切る社長の忰山 舞(かせやま まい)さんは、ニコニコと明るい声で話す華奢な女性で、自らを “仕事着プロデューサー” と名乗る。


神楽-KAGURA-代表の忰山(かせやま)さん

仕事着プロデューサーは、文字通り “職人たちが仕事場で着ている作業服を企画する” という思いを込めた肩書きだそうだ。
会社の代表者であるにも関わらず、敢えて仕事着プロデューサーをいう肩書きを持つ忰山さんに話を聞いた。

神蔵-KAGURA-」を始めたきっかけ

忰山さんの実家は30年以上前から足場鳶の作業服を作っているメーカー。その小売店を継いだことがきっかけで、ちょうど5年前にこちらへ移転した。

「物心ついた時から、先代である祖父の周りには当たり前のように足場鳶の職人さんが沢山いたせいか、無性に足場鳶さんが大好きなんです。」と明るく語る。「理由は…そうですね、唯一思いつくことは、20歳の時に足場鳶の職人さんがこんなことを言ってくれたんです。
「足場鳶は、他の職人が作業をするステージ(足場)を作り、他の職人が仕事を全うし建物が完成したら自らの手で撤去する。その仕事が形としては残らない職方が足場鳶。あくまで縁の下の力持ちという役割だが、「この現場は足場鳶のおかげで、納得のいく仕事ができた」と他の職方に言われることが喜びで、仕事の原動力になる。」
この言葉が私の心の奥深いところに刻まれているんだと思います(笑)」と、はにかんだ。

子どもの頃から当たり前のようにお店を手伝ってきて、19歳から今日まで25年間、鳶の作業服に携わってきた。
「自分が着る洋服も好きなのですが、仕事としては他の選択肢が浮かばなかったんです。とにかく鳶さんが好きで鳶さんに関わっていたくて、気付いたらこの世界に入っていました。」
今は弟が工場を経営しているので、姉弟でタッグを組んている形だ。


店内はアパレルショップのような雰囲気

家族みんなで行かれる店へ

「こういうお店って、休みの日に車で来ることが多いと思うんですけど…」
休日だから、もちろん家族も一緒に車に乗って来ているはずなのに、奥さんとお子さんが車の中でお父さんが戻ってくるのを待っている光景を、忰山さんは常々残念だと感じていたそうだ。

休日に来店する職人のために、奥さんやお子さんが一緒に入って来られるお店を作りたいと思った忰山さんは、出店する際に外観だけでなく内装にもこだわった。
いかにも “男の世界です” といった雰囲気にならないよう、見ているだけでも楽しめそうなディスプレイ方法を考えたり、子どもが走り回れる空間を作ったりと試行錯誤したそうだ。
そんな忰山さんの思いが伝わったのか、5年目を迎えた今、外で待ってる人はいない。


オシャレで居心地の良い店内には家族で訪れる人も多い

着ることによって胸を張れる作業服を

建設業に携わる方に、かっこいい姿で働いて欲しいと話す忰山さん。
「どうせ仕事で着るんだから、何でもいいじゃなくて、技術等で胸を張ることはもちろんですが、作業服を着ることで胸を張り、堂々と仕事に挑んで欲しいんです。」

例えば、スーツにしても何でもいい訳ではない。
確かにこだわりの詰まった衣服を身につけている人は、自然と背筋が伸び自信がみなぎっている感じがする。それは、作業服を着て仕事をする職人も同じだ。

そのことを表すように、「神蔵-KAGURA-」を訪れる職人は、細かいこだわりというか、ポリシーというか、一本筋の通った方が多いそうだ。
職人としてアンテナを高くしている人が常連客となることも多く、『これを買いに来た』ではなくて、『何か良いものはないかな』と、情報収集のために訪れる職人も増えた。
彼らの話を聞いていると、愛用している道具のように、作業服も気に入ったものを身に着けたいと思っていることも分かってきた。このようにして、忰山さんは日々、職人の仕事への向き合い方も含めた研究を続けているのである。


思わず手に取りたくなるオシャレなラインナップに心踊る


次の時代の作業着を表現するオリジナルブランド

職人の意識の変化

子どもの頃から多くの職人を見てきたことで、19歳でこの世界に入った時に 「もし自分が作業服をプロデュースするなら、単に何色かを展開して販売するだけではなくオリジナリティを出そう」 と思ったそうだ。
同時に、デザインや機能よりも、だらしなく見える “着こなし” が気になってきた。

「着こなしの大前提は、かっこよく着るのではなく、自分にあったサイズを着るということ」と忰山さんは考える。
自分に合ったサイズを着ることは当然のように聞こえるが、毎日身に着けているからこそ、【作業服=消耗品】となり、
『とにかく安ければ、体が入るサイズでいい』とか『とりあえず着られれば、見た目は何でもいい』といった考えになりがちだ。
「作業服は、職人さんの身体を保護する役割を持っているので、ほつれたり破れたりしていても平気だと受け流すのではなく、そういうことを気にする意識をもっと広めていきたい」と語る。

これは建設業に限ったことではないが、「身なりを整えている人は時事に満ち溢れているように見えて、実際に仕事のクオリティが高く丁寧だったりと、その人の人間性も表しやすい」と話してくれた職人に、忰山さんは心から共感したそうで、こんな風に思うようになった。
「きちんと着こなせて、それがかっこいいと思ったら着こなしが変わるし、すると作業服を着ることも楽しくなって、働くこと自体がもっと楽しくなるんじゃないかな」


デザインだけではなく、作業性を重視した品質にもこだわる

建設業の好循環にも貢献できるという期待

忰山さんは、服による効果をこうも考えている。
「会社の顧客の全員が、その会社の経営者に会う機会がある訳ではないので、接している職人さんが身なりを整えていることで、
同じクオリティ・技術で仕事をしていても『この会社は、真摯に対応してくれるんだな』っていうイメージが強くなる」

確かに職人たちは、顧客や施主だけなく、現場がある地域の人たちからも常に見られている。
そういう意味では、会社の顔=営業マンであり宣伝担当でもあるので、職人さんの好感度が上がれば『また、あの会社にお願いしてみようか』というように、
「神楽」の作業服が、会社にとって好循環を生む良いきっかけとなることもあるかもしれない。

例えば、医療従事者は白衣を、消防士は防火服を着ることによって、ユニフォームから連想させるイメージというものが確かに存在する。
着ているユニフォームによって、その職業に対して説得力が増す効果はあり、職人の作業服でも同じ効果があるに違いない。


普段使いもできるオリジナルブランドの人気商品

着る人を意識した作業服作り

職人の年齢層の幅が広い会社は、担当者がデザインや形などで悩むことも多い。
忰山さんは、難航していると感じたら、直接会社に出向いて、職人達とコミュニケーションをはかりながら皆で決めるようにしている。
特に、企業のオリジナルにカスタマイズする時は必ず出向く。なぜならば、自分の意見が取り入れられていると思える作業服は、より愛着が増すからだそうだ。

「そんな時は、いちばん困っていることを聞くようにしています。」

困っていることを聞いてみると、大抵は『嫌だから、ここを変えたい』『ここが不便だ』よりも、『まずは、かっこ良くしたい』『シルエットを変えたい』と前向きな反応が返ってくる。
つまり、今の作業服をかっこいいと思っていないと感じることが多い。

「皆さんの希望を聞いて、機能性を考えながら提案しています。プリントデザインしたり刺繍を入れられたりするので、その希望もお聞きします。
ロゴを入れる位置にもこだわる企業さんが増えていますね。」と忰山さん。


好きな場所にロゴや社名を入れられる

それに最近は、このコミュニケーションによって、彼女のような作業服のプロフェッショナルよりも、さらに意識を高く持っている職人が増えていることに驚くことも増えたそうだ。

口では『着られればいい』と言っていた職人も、『ああでもない』『こうでもない』と話をしていくうちに、だんだんに本音を引き出すこともできる。すると、“みんなで作った作業服” という感覚が生まれ、それを身につけることで一体感が増していく様子が見て取れる。
その過程も、忰山さんにとっては、たまらなく楽しい瞬間だ。

忰山さんにとっての建設業界

建設業界に対するイメージは、「日本を作っている人たち」と忰山さん。

住んでいる建物も歩いている道路…目に見えるものを作っているのは建設業界の職人だ。
何かを造ったり建てたりするには、設計士や測量士など様々な職種が介在しているが、実際に形作っているのは職人である。
忰山さんは、その点をもっと一般の方に知って欲しいと思っていて、
「シートに囲われたり、地下深い現場など、普段は目に触れないところでの活躍を知って欲しい。」と語る。

甚大な災害が起きた時、自衛隊が救助に向かう様子や復興を遂げた状況は報道されるが、その街に1軒ずつ建物が増え、復興へ向かう過程を見かけることは少ない。

「でも、職人さんが1つ1つの工程を積み重ねて、シートを外してお披露目し、素晴らしいものが出来上がったことを世の中に知らせるのですが、その工程をもっと世の中の人に知ってもらえたら嬉しいです。」

ついつい出来上がったものに目が行きがちだが、危険と隣合わせになりながら、それでもまっすぐと仕事に向き合っている人達の魂をもっと広めたいとも語っている。


「幼い頃から常に職人さんが身近な存在だった」と話す

仕事を通じた忰山さんのゴールは、鳶を子ども達の憧れの職業にすることだそうだ。
「鳶は世の中に必要な仕事だから。職人さんの生き様を尊敬の意を込めて仕事をすることで、子供たちに『僕・わたし、大きくなったら鳶になりたい』と言ってもらえる世の中になると信じています。」

だからこそ、忰山さんは職人と一心同体だと思っていて、彼女ができるところから全力でサポートしていきたいと思っているのだろう。


店内には作業着だけではなく建設道具が所狭しと取り揃えられている

<「神蔵-KAGURA-」でオーダーメイドの作業服を作りませんか?>

・デニム作業服:1着(上下)10,000円前後

・プリント入り作業服 :1着(上下)15,000円前後

・オーダーメイド作業服:1着(上下)25,000円前後

※所在地や営業時間など詳細はこちら → 「神楽 - KAGURA